函館ストーリー「涙の坂に、冬の灯り」

私は、雪を踏みしめながら八幡坂を登っていた。   足元で、きゅっ…と小さな音がして、そのたびに冬の空気が頬を刺す。 坂の上では、石畳の道も、レトロな洋館も、うっすらと雪の化粧をまとい、まるで古い絵本の一頁のように静…

函館ストーリー「霧の夜、声だけが灯る」

「電話くれてありがとう。初めてだね…嬉しかった、とても」 一年前に別れた彼が、初めて電話をくれた。 「やぁー、元気?」 それだけの、短い一言。   受話器の向こうで、少しだけ海風の音が混じった気がした。 付き合って…

函館ストーリー「雪の夜、熱燗を街で」

彼女は、一人カウンターで熱燗を飲んでいた。   湯気の立つ徳利をそっと傾けると、立ちのぼる酒気が目にしみた。   店の奥では、古いラジオが小さく演歌を流し、外からは路面電車の走る音が、雪に吸い込まれるように響いてく…