函館ストーリー「潮風のフリーウェイ」

街には、北北西の風が吹いている。 元町にある、カトリック元町教会の風見鶏は函館山を指したままだ。   やがて海風は、潮の香りとパンの焼く匂いを運んでくれた。 僕は、彼女が昨日忘れていったチェックのシャツを洗っていた。 …

函館ストーリー「目印は、ハートの文字」

函館山の伝説を確かめに 僕たちはロープウェイで山頂へと上った。 きらめく夜景に「ハート」という文字が浮かび上がるという。 その「ハート」を見つけることが出来たら その恋は永遠となるそうだ。 夕暮れから だんだんと地…

函館ストーリー「マーガレットの花言葉」

遅咲きの桜が散り、函館にもようやく本格的な春が来た。 そして花屋の店先には、マーガレットが目立つようになる。 「私、マーガレットが大好きなの!もし 私と別れても、私の好きなマーガレットの花は、嫌いにならないでね」 …

函館ストーリー「シトロエン 2CV」

元町にパンを買いに出掛けた。 「天然酵母パン tombolo(トンボロ)」は、 大正10年建築の和洋折衷様式で、 函館の伝統的建造物に指定されている建物で、元町の異国情緒が漂う雰囲気に溶け込んでいる。 「ハード系パ…

函館ストーリー「0.3ミリのペンで書いた、メッセージ」

オープンカフェのテーブルでアイスコーヒーを飲んだ。 1年ぶりに届いた手紙を読みながら… 函館発のメッセージは3枚の手紙と1枚の写真だった。 写真には、 コットンキャンディーのような雲が輝いている。 しばらくためらって、…

函館ストーリー「クロワッサンの美味しい街」

クロワッサンが、好きだ! 焼きたてのクロワッサンとカリカリに焼いたベーコン・エッグ。 そして、熱いコーヒー。 これが、僕の旅先での朝食だった… ホテルの窓から、ベイエリアが見えていた。 赤レンガ倉庫が朝日に照らされ、函…

函館ストーリー「桜前線、北上中」

南風が北国へと春を運ぶ! 都会の桜は散り、いつもの喧騒が戻ってきた。 テレビのニュースで北海道で桜が開花したとやっていた… 「帰ろうかな?あの坂の街へ!」 何気なく、一人つぶやいてみた。 東京での生活が自分には合わ…

ぴいなつ作:函館ストーリー「春爛漫、おとな遠足」

函館ストーリー「春爛漫、おとな遠足」 作:ぴいなつ 年々、涼しいはずの北海道の夏は最高気温が30℃を超える日も多く、涼を求めてやってくる観光客は思いがけない暑さに参っていた。 それなら冬は雪が少なく快適に過ごせるだ…

函館ストーリー「第二ボタンの行方」

函館ストーリー〈春〉 今年の春は早くて、GW前に桜が咲いた。 ある晴れた日、彼女は冬物のコートを風に干しブラッシングをした。 お気に入りのカシミアのコートだ。 特に気に入っているのが、第二ボタン。 他のボタンとは違って…

函館ストーリー「彼女とロシアンティー」

函館ストーリー〈春〉 僕たちは魚見坂を上り、カフェテリア・モーリエに立ち寄った。 大きな窓から、キラキラと青く輝く早春の海が、眼下に広がっている。 ここはロシア料理の店で、僕たちはピロシキとロシアンティーをオーダーした…