函館山の伝説を確かめに、僕たちはロープウェイで山頂へと向かった。

きらめく夜景に「ハート」という文字が浮かび上がるという。

その「ハート」を見つけることができたら、その恋は永遠になるそうだ。

 

夕暮れから、地上の星のような灯りが少しずつ増してくる。

あちこちから歓声が上がり、二人の心にも何かが輝いていた。

 

「見て!」

突然、Tシャツの裾をつかまれた。

彼女が指差す先には、確かに「ハート」の文字があった。

夕立にはしゃぐ子どものように、眩しい笑顔の彼女がいる。

 

心から彼女のことが好きだと思った。

僕は、彼女の手を握った。

それに応えるように、彼女も僕の手を強く握り返してきた。

 

函館山の山頂は、どこまでも白かった。

函館の夏の夜は、夜霧が出るので、すべてが白く包まれるのだ。

僕たちは、お互いに頷くと、短いキスを交わした。

 

 

あとがき:白い夜に浮かぶもの

函館の夏の夜は、霧に包まれて、すべてが少しだけ夢のようになります。

この物語は、夜景に浮かぶ「ハート」と、恋の記憶が交差する瞬間を描いたものです。

眩しい笑顔も、握り返す手も、白い霧の中で静かに輝いています。

読んでくださった方の心にも、そんな夜の光がそっと届いていたら嬉しく思います。