函館ストーリー「青い2CVと春のパン屋」

元町に、パンを買いに出かけた。 「天然酵母パン tombolo (トンボロ)」は、大正十年に建てられた和洋折衷様式の建物で、函館市の伝統的建造物に指定されている。 元町の異国情緒に、静かに溶け込むような佇…

函館ストーリー「春の函館、届いたもの」

オープンカフェのテーブルで、アイスコーヒーを飲んだ。 一年ぶりに届いた手紙を、そっと読みながら ──   函館からのメッセージは、三枚の手紙と一枚の写真だった。 写真には、コットンキャンディーのような雲…

函館ストーリー「クロワッサンと春の窓辺」

クロワッサンが、好きだ。  焼きたてのクロワッサンに、カリカリに焼いたベーコンとエッグ。 そして、熱いコーヒー。 それが、僕の旅先での朝食だった。 ホテルの窓からは、ベイエリアが見えていた。 赤レンガ倉庫が朝日に照らさ…

函館ストーリー「坂の向こうに 春がある」

南風が、北国へと春を運んでくる。 都会の桜はすでに散り、街にはいつもの喧騒が戻っていた。 テレビのニュースが、北海道の桜の開花を伝えていた。 ――帰ろうかな、あの坂の街へ。 思わず、ひとりごとのように口にしていた。…