函館の湯の川温泉にあるホテルは、海のそばに建っていた。

夜には、漁り火が美しく灯るという…

 

去年は、誰かといた夏だった。

同じ海辺で、同じ波の音を聞きながら、笑い合った。

でも今年は、僕ひとり。

 

とりあえず僕は、ホテルを出て、6本の缶ビールを並べた。

BGMは、波の音。

テーブル代わりは、白い砂浜。

 

そして、時おりカモメが話しかけてくる…

今年も、僕の夏が始まる。

少し静かで、少しだけ切ない――それでも、確かに始まっている。