函館ストーリー「潮風の午後、基坂にて」

きっと、ベイエリアからやって来るに違いない── 僕は、彼女が現れるであろう基坂を見つめていた。   潮風が、彼女の足音を運んでくる。 それは、僕が待つ元町公園まで、静かに届いた。   ある晴…

函館ストーリー「夜景の地図」

函館山から見る夜景は、あまりにも美しくて、言葉が出なかった。 私は、彼の手を思わずぎゅっと握りしめた。   ふと空を見上げる。 星は、あまりよく見えなかった。 輝く星よりも、夜景の美しさが勝っていた…

函館ストーリー「北北西の風とチェックのシャツ」

街には、北北西の風が吹いている。 元町にあるカトリック元町教会の風見鶏は、函館山を指したままだ。   やがて海風は、潮の香りとパンの焼ける匂いを運んできた。 僕は、彼女が昨日忘れていったチェックのシ…