函館山から見る夜景は、あまりにも美しくて、言葉が出なかった。

私は、彼の手を思わずぎゅっと握りしめた。

 

ふと空を見上げる。

星は、あまりよく見えなかった。

輝く星よりも、夜景の美しさが勝っていたのだ。

 

私たちは、指で望遠鏡を作って── 夏の夜空に、夢の地図を描いた。

 

 

あとがき:灯りの星座

函館の夜景は、星よりも近くて、心に触れるような光を放っています。

この物語は、そんな灯りの中で交わされた、静かな感情の瞬きを描いたものです。

指で作った望遠鏡も、夢の地図も、すべてが二人だけの星座のようです。

読んでくださった方の中にも、そんな夜の記憶がそっと重なっていたら嬉しく思います。