きっと、ベイエリアからやって来るに違いない──

僕は、彼女が現れるであろう基坂を見つめていた。

 

潮風が、彼女の足音を運んでくる。

それは、僕が待つ元町公園まで、静かに届いた。

 

ある晴れた夏の日の午後。

僕は、暑い日差しを浴びながら、一ヵ月ぶりに彼女と逢う。

 

 

あとがき:風が運ぶ気配

函館の夏は、潮風が記憶や気配を運んでくれます。

この物語は、再会の予感と風の音が重なる、静かな午後の一瞬を描いたものです。

基坂の向こうから届く足音も、光に包まれた再会も、すべてが夏の函館らしい時間の流れの中にあります。

読んでくださった方の中にも、そんな風がそっと吹いていたら嬉しく思います。