僕は自分自身と向き合いたくて、この街にやって来た。

函館は一面の雪景色――。

降り積もる雪が、悲しみや胸の痛みを静かに消してくれる。

「大丈夫。急ぐ旅ではないのだし…」

雪に包まれた函館山へ向かいながら、僕はそう呟いた。

雪が激しさを増し、早めにホテルへチェックインする。

電話線が凍らないうちに、部屋から彼女へ電話をかけた。

そして、好きな詩を朗読してほしいと頼んだ。

しんしんと降る雪。鳴り響く教会の鐘の音。

雪と風と空気の静寂の中で――

彼女の美しい声は、淡い初雪のように温かく、甘く胸に降り積もった。


あとがき…

雪の降る街には、不思議と心を静かに整えてくれる力があります。

悲しみも痛みも、降り積もる雪の白さに吸い込まれていくようで、気づけば呼吸がゆっくりと深くなる。

そんな冬の函館で、自分自身と向き合う時間を描きたいと思い、この物語を書きました。

遠く離れた場所から届く声は、ときに雪よりも温かく、胸の奥にそっと灯りをともしてくれます。

読んでくださったあなたの心にも、静かな温もりがひとつ残れば嬉しく思います。