函館ストーリー〈春〉

元町カトリック教会の風見鶏は北北西を向いたまま、動かなかった。
まどろみの午後、かすかな春風が南西に向かって吹き、僕につぶやく。
「彼女が、元町茶寮で待っているよ」
僕は、大三坂を上る足を進め、春風にお礼を言った